理事長あいさつ

日本心理医療諸学会連合理事長 挨拶
宮崎大学大学院教育学研究科
戸ヶア泰子(日本認知・行動療法学会)

日本心理医療諸学会連合(UPM:The Japanese Union of Associations for Psychomedical Therapy)は、心身医療及び心理学的援助を研究する諸学会の連合体として1988年に設立されました。医学系諸学会と心理学系諸学会の学際的な連合体で、現在15学会で構成されています。

このたび、河合啓介(日本内観学会)の後を継いで、2025年度〜2026年度のUPM理事長を戸ヶア泰子(日本認知・行動療法学会)が拝命いたしました。副理事長と共に、各加盟学会代表の理事や会員の先生方のお力とそれぞれの専門性を結びつける役割を、精一杯果たしてまいる所存です。

さて、心身医学、心療内科の基礎を築かれた池見酉次郎先生は、日本心理医療諸学会連合が発足した翌年の1989年(平成元年)のニューズレターで、「欧米では、医師に対する臨床心理学的な教育と併せて心理士に対する健康心理学的な教育が近年本格化し、これら両者によるチームワークの体制も確立しつつある。一方、わが国では、医師、心理士双方に対するこの種の教育が立ち後れており、両者のチームワークを支持する体制も定着しておらず、さらに、健康心理士などの資格も公認されていないのが現状である。」と述べていらっしゃいます。当時から35年余り経過した現在、メンタルヘルスなどの問題に対して、医療と心理が協働して対応することが一般的になり、多職種連携というキーワードも頻繁に耳にするようになっています。2018年9月には、心理援助職の国家資格である公認心理師が誕生し、医療と心理の協働はますます重視されるようになっています。このような現代の状況は、先人が身体的・精神的・社会的側面から疾病の予防、健康の増進、Well-beingの向上に関する研究と臨床を蓄積し、その成果を社会に発信し続けてくださったためであることは言うまでもありません。そして、私たちは、先人の努力を引継ぎ、発展させ、未来につなぐという使命を帯びていることも確かなことです。

一方で、現代社会を見渡すと、大規模災害や国際紛争、未知の感染症など、世界中の人々の健康や生活を脅かす深刻な事態が取り巻いています。AIの急速な浸透をはじめとするテクノロジーの発展は、様々な恩恵をもたらす一方で、デジタルデバイドの要因にもなっています。このように私たちを取り巻く環境は複雑さを増し、将来の予測も困難な時代になり、多くの人が精神疾患やストレス関連疾患の患者数も増加を示している現状があります。現代社会の状況に即したWell-beingの維持・向上に向けた取り組みを考えていくことが強く求められていると言えます。

すなわち、人々の心身の健康を支えるという理念のもとに学問領域の枠を超えた連携を実現してきたUPMの果たす役割の重要度が増していると言えるのです。UPMの主要な事業である年次大会・研修会は、連合学会という特徴を生かして、各種の専門領域から選ばれた講師から様々な治療技法や知見を幅広く学ぶことのできる貴重な機会となっています。近年はオンライン開催方法を採用することで、様々な状況にある方々が参加しやすくなるようにしています。第37回大会(2025年度開催)は、日本カウンセリング学会に大会・研修会を引き受けていただきました。大会テーマや開催時期、プログラムなどは、決まり次第ご案内させていただきますが、ぜひ多くの方々にご参加いただけますよう、ご協力をお願い申し上げます。UPMを通じて、皆様の各種専門領域の結集による成果を社会に還元できるよう、 微力ながら懸命に尽くしてまいりますので、ご理解ご協力の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

2025年6月

日本心理医療諸学会(UPM)連合理事長 戸ヶア泰子
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